枇杷が来てからというもの、朝起きるのが苦痛ではなくなった。
とはいえ、起きてしばらくはダラダラとコーヒーを飲んだりしているのだけれど、
それでもベッドの中で延々とスマホをスクロールすることはなくなった。
朝は8時頃、枇杷と散歩に出かける。
少し前までは、この時間にはもう燦々と光が降り注いでいたのに、今は朝の光もずいぶん柔らかくなった。
昨夜の雨のせいか、今朝は少し肌寒い。
今日はいつもとルートを変えて、街の中心にある大聖堂まで行ってみようと思っていた。
けれど途中、ジャンヌ・ダルク像のあるマルトロワ広場で、枇杷は動かなくなった。
鳩がたくさんいたからだ。
追いかけるのが楽しくて仕方がないらしい。
枇杷は楽しいことがあると、ぴょんぴょんと跳ねるように、弾むように走る。
その姿があまりにもかわいくて、
それを見られただけで、朝から少し得をした気分になる。
もしかしたら、こんな走り方をするのは子犬のころだけなのかもしれない。
大人になったら、もうやらなくなるのかもしれない。
犬と暮らしていると、どうしても人間よりずっと速い時間を彼らが生きていることを意識する。
今まで二匹を見送っているからこそ、「この瞬間もいつか過去になる」ことを、もう知っている。
だから枇杷がぴょんぴょん走ったことも、寝言も、初めて洗った日の匂いも、鳩を追いかけた朝も、どうでもいいようなことまで残したくなる。
彼女のこういう姿を、私はずっと覚えておきたいのだ。

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