小さな右足

枇杷が我が家に来て、六日目。

事件は起こった。

枇杷のために段差のあるところには階段を用意しているものの、最近はカウチに飛び乗ったり、家の中を走り回ったり。
ほんの数日前とは比べものにならないくらい、脚力がついてきた。

ちょろちょろと、とにかくよく動く。

これは完全に私の不注意なのだけれど、椅子に座っていた私の膝に枇杷を乗せていたとき、
まさかのジャンプ。飛び降り。

そして、案の定、着地に失敗した。

痛かっただろうと謝ったものの、次の瞬間、どうも様子がおかしい。

歩くたび、小さな声で「きゅーん」と鳴く。
右足を、床につけない。右足を引きずりながら歩く。

さっきの衝撃で、もしかして骨折したのかもしれない。

まだ生後二か月ちょっと。
骨も柔らかく、階段がある場合は支えるようにと、ブリーダーさんから言われていたのに。

いつもより帰りの遅かった夫に電話すると、ちょうどアパルトマンの下まで戻ってきていたらしく、慌てて帰ってきた。

運の悪いことに、時計は十九時。
ほとんどの動物病院が閉まる時間だった。

緊急病院に電話をして、待つこと十分。
症状を伝え、二十一時の予約が取れた。

夫が、取ってくれた。

フランスでのわたしはあまり戦力になれていない。

フランスに来て、六年になる。

日常生活はだいたいなんとかなる。
買い物も、レストランの予約も、お店の人との会話も。

でも、こういう突然のことになると、途端に言葉が心もとなくなる。

痛がっている。
足をつかない。
骨折かもしれない。

伝えたいことは単純なのに、いざとなると言葉がすぐには出てこない。

六年もいるのになあ、と少し落ち込む。私ももう少し、がんばらなければならない。

そう思いながら小さな体を抱いていた、その数分後。

枇杷は何事もなかったように、また部屋の中をちょろちょろ走り回っていた。

……一瞬、痛かっただけらしい。

よかった。

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