Last Updated on 2022年4月12日 by Jo
ここ数回に分けて、2019年に読んだ本をご紹介しております。
(前回、前々回はこちら→【読書記録2019】小説編 1 【読書記録2019】小説編 2)
今回は小説編第三弾です!
だれかの木琴
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最近大好きな井上荒野さんの小説です。とある主婦がある美容師との出会いを機にストーカー化していくという話です。ストーカー側の視点と、ストーカーされる側の視点で物語りは進んでいきます。
ストーカーする側は“普通の40代女性”なので、読み手としてはそこまでぞっとするような怖さはないのですが、もしこれが実際に自分の身に起こったら、相手が普通の人だけにさらに恐ろしいような気もします。
でもそんな自分ももしかしたらストーカーになる可能性を秘めている・・・そんなお話です。
切羽へ
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こちらも井上荒野さんの作品。こちらの作品で荒野さんは直木賞を取られています。
九州の離島を舞台に、そこで暮らす人々の生活を書いています。荒野さんの作品は性愛を直接書かないまでも、どこか秘めたエロスがあります。
また、普段見逃してしまうようなことを丹念に文章に書き残してくれているところも大好きです。
この小説の中に主人公が近所の独居老人の方にお魚をおすそ分けに行くシーンだったり、また別の日にはケーキをおすそわけにいくシーンがあるのですが、そのときの「ケーキが乾かないように包みなおした」とかそういう文章がとても染みます。暗いニュースばかり見て心が疲弊していると感じる時、「荒野さんの小説が読みたいな~」と感じるのは、人々の揺るがない普通の暮らしがそこにあるから。
荒野さんご自身もお料理が大好きなようで、インスタにはよくお料理を載せていらっしゃるのですが、小説にもよく食べ物の描写があり、荒野さんの料理小説集なるものも読んでみたいです。
恋
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小池真理子さんの代表作でもあり、直木賞受賞作の「恋」。浅間山荘事件という実際にあった、そして誰もが知っている事件を常に隣に置くことで、70年代がどのような時代であったかを読者に理解しやすくし、その上で別の事件を主軸に物語が進んでいきます。学生運動が盛んだった70年代前半に大学生だった矢野布美子は、大学助教授の片瀬信太郎と妻の雛子の優雅で奔放な魅力に心奪われ、恋なのか何なのかよくわからない感情とともに彼らとの生活に溺れていきます。
そんな中3人の生活を壊す一人の青年が現れて・・・!?
ある男
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著者の平野さんは純文学系の作家でほとんど唯一と言ってもいいほどツイッターを駆使している方なので、ご存知の方も多いのでは。平野さんの作品を全部読めているわけではないんですが、この「ある男」と「マチネの終わり」は読みやすかったです。
ツイッターでも社会問題についてのツイートが多い平野さんらしく、ヘイトスピーチや戸籍取替え問題などなど、現代日本の社会問題を織り込みつつ、自分とは何か、名前とはどんな意味を持つのか、など考えさせられる小説です。
つみびと
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高校生の頃から山田詠美さんのファンで、そこまで熱心な読者ではなくなった今も新刊が出たら買っています(最新刊はまだ読んでないけど)。
この小説は2010年の大阪二児置き去り事件をモチーフにしており、詠美さんの長い作家生活の中で始めて実際の事件をモチーフにした、かつ新聞連載という形を取った小説なのだそうです。わたしも2010年の事件は衝撃だったこともありよく覚えています。自分の子どもたちを置き去りにし、餓死させた母親はもちろん罪深いけれど、なぜ彼女がそうなってしまったのか、何が彼女をそうさせてしまったのかということを丹念に書き上げています。
詠美さんの視点にはいつもはっとさせられ、自分が見えていなかったものを書いてくれる作家だなと思います。
恥辱
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ブッカー賞、それからノーベル賞まで受賞した南アフリカ作家の小説。
52歳の大学教授は二度の離婚を経験後、娼婦や手近な女性で自分の欲望をうまく処理してきた。しかしその延長のように軽い気持ちで関係を持った女生徒に告発され、大学から追放されてしまう。その後逃げるように実の娘の住む田舎へと赴くが、そこで彼の人生はまた思いもよらぬ方向へ転がり始める・・・
ちょうど元TBS記者によるドラッグレイプ事件、権力のある人からのレイプ事件の渦中にあった去年に読んだ本だったので、じっとりと手に嫌な汗をかくような小説でありました・・・
帰らずの海
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「不夜城」の著者である馳星周さんの小説。
刑事・田原稔は生まれ育った函館に数十年ぶりに帰ってくる。移動の辞令を受けての帰郷であったが、その後すぐにとある殺人事件に関わることになる。被害者はかつて愛した女性・水野恵美-。恵美を殺害したのは一体誰か。その事件を追う中で浮かび上がる稔と恵美の過去とはー!?
ハードボイルドな小説で読み応えがありましたが、なぜこう恵美さんばかりを不幸にするのかと被害者女性に同情しか沸きませんでした・・・不憫。
気になる小説はありましたか? 以上、2019年に読んだ本・小説編3でした!
ちなみに、わたしはほとんどの本はKindleで読んでいます(KindleはAmazonの電子書籍。楽天ユーザーはRakuten Koboから出ている電子書籍リーダーがあるようです。こちらの記事もご参考に海外在住でも読める!本は電子書籍が断然便利
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